


■ おつかれさまです
上の見出しは、ここまで読んでくれているみなさまにお送りすると同時に、下で紹介する祐便受けに対してのものでもあります。

きっちりと「口だけ」祐便受けを塞いだ例。おつかれさまでした。

こちらはやや未練の残る「おつかれさま」。

祐便受け本体が取り除かれ、ぽっかりと穴だけが残る例もしばしば見られます。

こちらはまだまだ現役。口まわりの年季の入り具合と「チラシ断リシマス」の文字に「老兵は死なず」という言葉が頭をよぎる。おつかれさまです!

いったいなにがあったのか。かなり大胆の修繕が行われたあとがある。こういう苦労のあとにもぐっとくる。おつかれさまです!

かなり未練の残る引退か。本稿執筆時点でまだこのガムテープが残っているかどうか。おつかれさまです。
これをみて自分で得心がいったのは、「容易に撤去できないから『口だけ』祐便受けに惹かれるのだな」ということだ。
つまり、ボックスタイプなら塀から取り外して新しいものを付ければよいだけだが、「口だけ」の場合はそう簡単にはいかない。塀に開けられた穴の大きさはそう簡単には変えられないから全く同じ郵便受けを入手しなければならない。しかも穴に合わせて設置するその作業自体も骨の折れるものだろう。
つまり一度伴侶となったからには添い遂げる覚悟がいる。世間一般における「口だけの男」のイメージとは全く異なる一途なタイプ。それが祐便受けにおける「口だけ」なのだ!
■ そして祐便受けは基本にかえる
最後にぼくが最も気に入り、かつ「そうか、ポストってこうだよな」と気づかされた逸品たちをご紹介しましょう。

これ、ほんとにすばらしい。設置位置、大きさ、そして色。完璧なコンポジション。

壁素材ではないが、口と一体ではないひさしタイプ。これもいい。

塀に挟まれた端っこで健気に働いてきた祐便受け。風雨にさらされながらもかくしゃくとした佇まいに惚れ込んだ。
もうお分かりだろう。何に気がつかされたのかというと、「ポストって赤いよね」ってことだ。
祐便受けたるもの、赤くあるべし。真理とはときに陳腐なものだ。というか、赤が良い!っていうのは毎度のことながら単にぼくの趣味なのですが。


まだまだすてきなものがたくさんあるのですが。
いかがでしたか。いつもにもまして個人的な趣味で突っ走って申し訳ない。
でも、郵便受けって想像していたよりバリエーション豊かで(今回は「口だけ」しか紹介できませんでしたが)、見ているとお住まいの方のキャラクターがうかがえるようでちょっと楽しいですよ。
そしてやっぱり、祐天寺にはすてきな郵便受けが多かった気がします。いや、ほんとに。

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1972年生まれ。

団地サイト「住宅都市整理公団」総裁。

ニフティ「デイリーポータルZ」の連載ほか、
NHK-BS「熱中時間」のレギュラーも勤める。

主な著書は「工場萌え」「団地の見究」(共に東京書籍)、「ジャンクション」(メディアファクトリー)、「高架下建築」(洋泉社)など。


