Uほどう

祐天寺・ドア紋


今回は祐天寺の「ドア紋」を見ていこう。

まいどまいど、なんのことか分からないと思う。とにかく見ていただこう。



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「ドア紋」とは、これ。こうやって見るとなんだかずいぶんノーブルな雰囲気。

「ドア紋」とは左のようなものだ。そう、要するに玄関ドアスコープのまわりを飾っている部分のこと。

そこに穴があるだけじゃ味気ない。そこでそのまわりをデコってみよう。そういった風習がいつ頃どこで始まったのか不明だが、いまや日本中(もしかしたら世界中?)の街で目にすることができるポピュラーなエンブレムだ。

そう、これはエンブレムだ。紋章。玄関ドアといういわば家の顔にあたる部分の、しかも目の高さど真ん中に誇らしげに飾られるこれは、もはや紋章と呼ぶにふさわしい。


家の紋なので「家紋」「イエモン」と呼びたいところだが、どっちもどこかで聞いたことがある響きなので「ドア紋」と呼びたい。ちなみに正式名称は知らない。

念のため申し上げておくが、スコープ自体にはまったく興味がない。あくまでドア紋だ。ましてやスコープを覗くなどもしていない(覗いたって見えないけど)。そういう趣味はぼくにはない。まあドア紋鑑賞するのも褒められた趣味ではないかもしれませんが。



■ ポピュラーな「花形」


さて、ドア紋は、いってしまえばパターンが決まった工業製品だが、それでもなかなかバリエーションがある。持ち家の場合は家主さんが選び抜いたものであろう。そこにどういったこだわりがあるのか。それを見ていきたい。

しかし、一方で工業製品となれば「カブる」事例が多くなるのは必然。まずは祐天寺で最も多かったドア紋をご紹介しよう。上で最初にご紹介したものがそれにあたる。いわゆる「花形」である。いわゆる、ってい ってもいまぼくが勝手に名付けたんですが。



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うっすらと積もったホコリが凹凸感を増幅。期せずして重々しい雰囲気を演出。

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こちらも使い込まれた感じがすばらしい花形ドア紋。


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同じ花形でもよーく見ると印象が異なる。これは全体的にすっきりとした感じ

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錆か摩耗か、有機的な佇まいとなっている花形ドア紋。


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こちらはシックな黒の作品。微妙に左に傾いている点もかわいらしい

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なぜか白いドアには黒い花形という組み合わせのようだ。


おそらく同じ商品なのだろうが、よく見ると微妙に形が違う。それにしてもこの模様はもともとなにから来ているのか。


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おそらく花形と呼べるモチーフのドア紋は世の中にごまんとあると思われるが、ここ祐天寺では上のものが圧倒的に多く、それ以外の花形パターンはほとんど見られなかった。

そんななかでみつけたお気に入りの花形が左の作品だ。花というよりなんだか山菜のようだが。春先に天ぷらとかにしそう。

表面のこまかいテクスチャにぐっとくる。

■ ドアにおける敬虔な祈り・十字モチーフ


さて、つぎは円形ではないタイプをご紹介しよう。下のようなものだ。


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十字と呼ぶにはまだ伸び方が足りないか。

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「十字」と呼びたい意味がお分かりいただけるだろうか。ただ、ちょっと斜めになっている。


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そのかたちから十字タイプと呼んでいる。上の2つなどは、まだどこか花形と同様草木のモチーフを色濃く残しているが、左のものは完全に十字だ。

玄関先で篤実さを遺憾なく表現する十字タイプのドア紋。しかし、覗き窓に十字とは、もしかしたら魔除けの意味合いがあるのかもしれない。

■ ドア紋における植物モチーフの根強さ


今回ドア紋をとっくり鑑賞して分かったことは、上にもあるように、草木をイメージさせるデザインが多いということだ。これはドア紋に限ったことではなく、一般にエクステリアにはそういう傾向があるように思う。なんかツルが絡まったようなデザインの門柱とか照明とか。なぜか自然の造作にあこがれるようだ。

下記のものもあからさまに植物モチーフ。というか、植物をモチーフにしたヨーロッパ伝来の装飾をモチーフに、というところか。

家紋も植物を意匠化したものが多いと聞く。ドア紋と命名したぼく。我が意を得たり、といったところである。


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■ ほんとにそれは使われているのか・ノッカー付きタイプ


玄関ドアにおけるオプションとして、ドア紋にならびもう一つ見逃せないのが、ノッカーである。

というか、これはドア紋の一部かと思う。というのは、これ、ほんとにコンコンと利用されているのか疑問だからだ。だって、たいてい呼び鈴が別途用意されているし。ほんとにこれ鳴らしたら家の人はびっくりするんじゃないかな。

なので、ぼくとしてはこれをドア紋の一部として扱いたい。その多彩な表情をご覧いただきたい。注目ポイントはスコープをノッカーの取っ手に対してどの位置に持ってくるかである。


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ノッカータイプドア紋としてはシンプルにまとめたタイプ。スコープは取っ手の下。

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「鳴らすぜ!」という意気込みが感じられる重厚なタイプ。かっこいい。でも取っ手には永いこと触れられた形跡がない。スコープは、真ん中。


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なんかゲンゴロウを彷彿とさせるデザイン。取っ手のストロークの短さが気になる。ま、鳴らされたことなさそうなさび具合ですが。スコープは、上。

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ずいぶんと華奢なタイプ。ノーブルに見え、ねじ穴を隠さないあたりに庶民的な一面が覗く。スコープは、真ん中。


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こちらは珍しく具象的なデザイン。モチーフは何だろうか。杯とか?スコープの一体感がすばらしい。

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左のものと同じデザインながら、スコープは別。あくまでノッカーとしての孤高を保ちたいという強い意志が感じられる一品。スコープ下のフックも気になる。



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ノッカータイプはデザインバリエーションが非常に広く、見ごたえがある。

あいかわらず植物モチーフが多く見られるが、なかでもぼくがかなり気に入ったのが左だ。この重厚な雰囲気はすばらしい。ぜひいちどコンコンしてみたい作品である。

取っ手が背景のパターンに埋没してしまっている点も見逃せない。そのストロークの短さから、おそらくもはやコンコンされることなど期待していないことがうかがえる。つまりこれはノッカーの形骸化であり、純粋なデザインモチーフとしてのノッカーの出現なのである。


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祐天寺の平和を守る百獣の王。でもライオンにこういう丸い眉みたいなものってあったっけ?

一方、こちらもかなりぐっときたノッカータイプ。ノッカー、かくありたし、と思わせられる作品である。

眼光鋭いライオンさんのまなざしからは「不審者、ゆるすまじ」という気概がひしひしと伝わってくる。ま、不審者はぼくなんですが。


■ その他気に入ったもの


祐天寺を隅から隅までくまなく探せばもっとたくさんのドア紋があるのだと思うが、敷地におじゃまするようなことなく鑑賞させていただけたものでいえば、以上のようなところが主なラインナップである。

当然、いずれのタイプにも属さないものも多くあり、そんななかでぼくがとくにぐっときたものを3つご紹介したい。


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ひとつめは、これ。シンプルなデザインと、緑錆が良くマッチしている。

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エンブレムの最高峰。「紋」たるもの、かくあるべき。かっこいい。


すばらしい、と思わず感嘆の声を上げたのはこれである。


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いま、玄関ドアに求められる全てを兼ね備えた贅沢な作品。


基本に忠実な花形ドア紋あり、にらみを利かせた獅子ノッカーあり、その頭上にはダメ押しのように王冠が。すばらしい。

ドアの色に合わせた色づかいも心憎い。というか、これは住民の方があとから塗ったものだろうか

スコープも塗られちゃったようでレンズが確認できないが、そういう些末なことはもはや問題ではないと思わせられる。



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■ これらを選んだ経緯などお聞きしたいです


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うっすらとドア紋の痕がのこるスコープ。こういうのもちらほらあります。

祐天寺のドア紋、いかがだっただろうか。

ぼくは自分の家を持ったことがないので、どういうプロセスを経てドア紋が決定されるのか知らない。しかし、他の住宅備品に比しておざなりになりがちであろうことは予想される。「まあてきとうに選んどいてよ」って工務店さんに言っている光景が目に浮かぶ。

そんななかでライオンを選ぶにはそうとうなこだわりがあるに違いないと思う。ぜひいちどそのココロを聞いてみたい。



ライタープロフィール大山顕

大山顕

1972年生まれ。

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団地サイト「住宅都市整理公団」総裁。

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ニフティ「デイリーポータルZ」の連載ほか、
NHK-BS「熱中時間」のレギュラーも勤める。

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主な著書は「工場萌え」「団地の見究」(共に東京書籍)、「ジャンクション」(メディアファクトリー)、「高架下建築」(洋泉社)など。


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