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祐天寺巡見記 / 装テン篇(後篇)


※このページは後篇です。先に前篇からお読みいただくと、
この記事がより一層楽しめます。たぶん。



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■ 箱と板

機能と装飾のあいだで揺れ動く素敵な物体、装テン。
前回は装テンの基本的な分類について述べた。
装テンには平面タイプと立体タイプがあり、
立体タイプにはカーブ・ストレート・ベンドの3種がある。

しかしそんなにあっさりと分類に収まるほど
装テンの世界は浅くない。
立体タイプには、他にも特徴的な形状がある。
「箱」と「板」だ。



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箱はストレートの亜種とも言えるし、ベンドの亜種とも言える。
また、板はベンドの亜種である。
傾斜角と面の深さ(上下幅)の違いで、
装テンは様々な表情を見せるのだ。
深いのが箱、浅いのが板、と言うこともできるだろう。

しかしそんな難しいことよりも、
「箱っぽいな」と思うものが箱、
「板っぽいな」と思うものが板だと思えばいい。



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それでは箱と板の事例写真を見ていこう。



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板。
この緩やかなベンド感、好きだ。
もし体が巨大化したら、このカーブを撫でてみたい。



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箱。
すっきりした直方体っぷりが清々しい。
モノリスみたいだ。
メニューに「宇宙てんぷら」とかあったりしないか。



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箱。
奥行きがあって頼もしい。
店名+電話番号は装テン文字の定番だが、
そろそろURLが出てきてもいいと思う。
すでにどこかにあるのだと思うが、
私は今のところ見つけていない。



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これは板とは言いがたいのだが、
いろいろと考えさせる装テンだ。
立体ベンドの中で「浅い+傾斜が少ない」ものが
板と呼ばれるわけだが、その境界を感じさせる。
もう少し傾斜角が浅ければ、板と呼べるかもしれない。



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板・カーブ。
一瞬、あっさり風味のタレ(前篇参照)かと思ったが、
よく見ると裏側に骨が張ってあるのでタレではない。
タレの有無の判断はなかなか難しく、
裏側を見ないと分からないものもある。



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箱。
何も書かれていない、色褪せた装テン。
好きだ。このそっけないところが私を惹きつける。
雨やどりが無理そうな奥行きの狭さにもぐっとくる。



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■ ぐるテン

次に「ぐるテン」をご覧いただこう。
ぐるテンとは「ぐるりテント」の略で、
建物の角に張られた装テンのことである。
ぐるっと角を巡るテントの張られ方が見どころだ。



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すっきりしたコーナリング。
3面すべてに書かれた
「洗う!乾かす!コインランドリー」が賑やか。



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左の角はつなげて、右の角はセパレート。
素敵だ。
なにか施工上の事情があったのだろうと思うが、
結果的に個性的なぐるテンに仕上がっている。



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これはもう少し横にぐるりを伸ばして
ぐるテンっぽさを強調してほしかったな、と思う。
ぐるテンは長さが大事だ。
どこかに建物のまわりを完全に1周まわっている
ぐるテンはないものか。



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真ん中の電柱とミラーが邪魔だ。残念。
こんなところに設置しないでもらいたい。
ぐるりの一番いいところが見えないじゃないか。
都市計画に装テン愛好家への配慮を求めたい。



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■ こぶテン

続いて「こぶテン」を見ていきたい。
小さく、こぶりな、「こぶりテント」のことだ。
後回しにしてしまったが、この「こぶテン」は
初心者にも装テンの魅力が伝わりやすいと思う。
どれもかわいいのだ。



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かわいい。
タレの緩やかな切り込みもかわいいし、
鳥のロゴも素敵。
ちなみに立体タイプのドーム型。



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こちらはタレなしドーム。
黄色もまた良しだ。
マドレーヌのような縞模様がまたかわいい。



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こぶりなベンド。
角刈りっぽくて渋い。でもかわいい。
渋カワだ。



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こぶりな箱。つまり小箱。
私が巨人だったら、この中から指輪を取りだして
彼女にプロポーズしたい。



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連続こぶり。
連続したらこぶりとは言えなくなってしまうが、
ドームテントのかわいさは残る。
ひと続きのテントにせず、
わざわざドームを連ねたところに
施主のこだわりを感じる。



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■ その他の装テン

最後である。
これまでの分類では取り上げなかった
様々なタイプの装テンたちを見て終わろう。



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平面タイプのこぶりテント。
この形状はまだサンプル数が少ないため、
分類名を命名していない。
祐天寺でもこの1つだけだった。
ひとまず「山」とでも名づけよう。



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立体タイプの特殊型。
この分類名はどうしようか。
「カポック」にするか。



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いかにも装テンらしいストライプがうれしい。
これは一見、立体タイプに見えるが、
よく見ると平面タイプという代物。
傾斜角は垂直に近く、ひさし効果は低い。
看板機能に重点が置かれている。



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立体ベンドの特殊型。
動きを感じさせる高さの変化が秀逸だ。
色も微妙に違っており、中央部の白さが際立っている。



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これはときどき見かけるパターン。
(祐天寺では少なかったが)
入口の上に来る箇所を膨らませるという指向は、
先ほどの白いベンドと共通している。



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長くつき出た、かまぼこ型。
これはキャノピーと呼ばれるテントで、
歩道をまたいでせり出しているのが特徴だ。
はたして、キャノピーは装テンなのだろうか。
分からない。
おそらく今後、装テン愛好家のあいだで
激しい論争が繰り広げられるだろう。



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これも「装テンとは何か?」を問いかけてくる物件だ。
これはどちらかというと、のれんである。
しかしいろんな装テンを見ていると、
これもふと装テンなのではないかと思う瞬間がある。
あなたはどう思うだろうか。



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すごい。高い。広い。
真ん中にあいた穴。
波型にカットされた下部のデザイン(タレではない)。
斬新な装テンスタイルだ。
祐天寺の装テン力(りょく)を見せつけられた気がした。

しかし私がいちばん驚いたのは次の装テンである。
これには度肝を抜かれた。



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この独特の形状はなんだろう。
真ん中の開いている部分は
ベランダになっているのだろうか。
そして装テンの高さに注目してほしい。
装テンが、建物本体よりも高くなっている。
祐天寺おそるべしである。

私が巨人だったら、
これをティッシュケースにして部屋に置きたい。



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装テン篇、いかがだったろう。
様々な装テンをご覧いただいたが、
これらは奥深い装テン世界の、ほんの入口にすぎない。
さらに奥へ踏み入るかどうかは、あなた次第だ。

祐天寺の装テンからは、全体的に大人な印象を受けた。
あまりはしゃいでおらず、落ち着きがある。
それはやはり、祐天寺という町そのものの印象と似ていると思う。

テンター(装テン愛好家)は、装テンから「その街らしさ」を感じ取る。
あなたも、まずは自分の住む街の装テンを観察するところから始めてみてほしい。

※「テンター」は平板な発音で、「転倒」みたいに言うこと。



ライタープロフィール 内海 慶一

内海慶一

ライター、ピクティスト。

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1972年生まれ。

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2001年よりピクトさんの収集・研究を始める。

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2003年、Web上に「日本ピクトさん学会」を設立。

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2007年・2008年に「東京カルチャーカルチャー」にてスライドショーイベント「ピクトさんナイト」を開催。

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ピクトさん学の普及に努めている。


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